35 遠江一宮の舞楽の歴史
舞楽は、欽明帝(きんめいてい)の頃大陸から渡来したと言う雅楽に舞を付したもので、唐楽(からがく)(左舞(さまい)、西域系、赤色装束)と高麗楽(こまがく)(右舞(うまい)、朝鮮・満州系、青装束)に分類され、平安時代藤原期に全盛を極め大寺社などで行なわれた。地方への伝播は、その後、密教寺院やこれと融合した大社などの法会(ほうえ)・神事(しんじ)に組み込まれていった。童舞(わらべまい)(稚児舞楽)は、鎌倉前期には盛行を見せ、畿内では醍醐寺や聖護院、東国では伊豆山権現や鶴岡八幡宮などで行なわれており、小國・天宮の舞楽もこれらと同様の稚児舞楽である。
遠江一宮(小國一宮社、小國社の摂社天宮)の舞楽は本来寺院方の行事であり、蓮華寺を中心とした一宮一山組織(両社の神人や天台系寺院の僧侶)と国司、守護・地頭などの武士層がこれに関係し、遠江国の 豊饒 ( ほうじょう ) や国家の安泰を祈って両社ともに12段の舞楽が行なわれてきたようである。 天正18年、円田郷粟倉の鈴木太郎左衛門(左近(さこん))が舞楽役となり、同家が近世を通して小國・天宮両者の舞を司ってきた。小國方の舞楽賄いは、神社から10俵の米が神宮寺に支給され、楽頭(がくとう)・色香(しきこう)舞などは扶持田(ふちでん)が配当され、舞楽一切を神主(旦那)が支えている。
天宮の祭礼は、若者衆(天社轂(てんしゃこく))が大きな担い手で舞楽や行道などの全ての段取りをなし、天宮神領内の法事田(ほうじだ)(祭礼田)と町場の旦那衆の寄進によってこれを支えてきた。両社の舞楽は、単独のものではなく、一宮と言う地域を金胎両部(こんたいりょうぶ)の思想に二分し、これを左方・右方にも意味付けて、両社の舞楽を番(つがい)とすることにより、遠江の豊饒と国家の安泰を祈る一宮の曼荼羅(まんだら)を形成させた。
(2)一宮舞落指南書

1677年(延宝5年)に楽頭鈴木武左衛門尉が記したもので、現在もこの内容に従って舞われている。(森町円田 個人所蔵)
(3)舞楽面等請取証

1697年(元禄10年)、小國・天宮両社同時造営の際、祭具を修理に出したときの請取で、菩薩面などの記載がみられる。 (森町円田 個人所蔵文書)
(4)遠江一宮の祭礼図

小國神社の色香(菩薩)舞が舞われ、神主が拝殿から、名主層が桟敷で見物している。 (個人所蔵)
年代 | 中央記事 | 関係記事 |
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539年 欽明帝 |
この頃雅楽が日本に伝来 | |
810年 (弘仁元年) |
小國神に鹿苑(ろくおん)菩薩号を授かる。 | |
840年 (承知7年) |
小國天神が上位する。 | |
860年 (貞観2年) |
はき原(はきはら)河内(こうち)小國神(おくにがみ)が従四位下を授かる。 | |
1081年 (永保元年) |
全国二十二社が選定、次で一国祭祀が確立。 | |
1082年 (永保2年) |
清原則房(きよはらののりふさ)が小國社の神主職となる。 | |
1083年 (永保3年) 舞楽伝播期 |
この頃、中央の大寺社で舞楽が全盛。 |
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1165年 (永万元年) 舞楽伝播期 |
源頼朝が征夷大将軍となる。 | 小國社が遠江で唯一神祇官へ絹五疋(ひき)を貢納。 |
1192年 (建久3年) 舞楽伝播期 |
この頃、伊豆・箱根権現で稚児舞楽隆盛。 | |
1235年 (文暦2年) |
小國一宮社に対して藤原家貞等が起請(きしょう)。 | |
1543年 (天文12年) |
天宮社が金胎両部の一社であることを今川氏が認める。 | |
1583年 (天正11年) |
家康、小國鹿苑大菩薩社一宇(いちう)を造営する。 | |
1589年 (天正17年) |
家康、天宮菩薩社の社頭一宇を造営する。 | |
1590年 (天正18年) |
円田郷粟倉の太郎左衛門が舞楽役となり、天宮の若者衆が掟を定める。 | |
1603年 (慶長8年) |
徳川幕府成立。 | |
1677年 (延宝5年) |
舞楽の舞方を鈴木武左衛門が記す。 | |
1697年 (元禄10年) |
一宮(小國・天宮)造営につき、面・装束・諸道具など修理、12月4日小國遷宮、同9日天宮遷宮 | |
1738年 (元文3年) |
小國社の舞楽諸道具修理目論見をする。 | |
1761年 (宝暦11年) |
「御宮御祭礼起用帳」が記される。 | |
1789年 (寛政元年) |
「一宮祭礼舞楽所用記」が記される。 | |
1794年 (寛政6年) |
「一宮舞楽勝手掛り受取覚」が記される。 | |
1804年 (享和4年) |
舞楽法会が昼となる。 | |
1806年 (文化3年) |
試楽(しがく)が八段から十二段となり、天宮が正式となる。 |
(明治以降略)
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更新日:2019年03月05日