46 森町の寺院建築
森町の寺院を宗派別に見ると、曹洞宗が27か寺、日蓮宗・真言宗・天台宗がそれぞれ2か寺、浄土宗1か寺で、曹洞宗の寺院が圧倒的に多い。これらの中で、金剛院山門・天宮神社神宮寺の2件が町の文化財に指定されている。寺院の建物で建立年代が判明する最古のものは、1696年(元禄9年)に建立された三倉の栄泉寺(えいせんじ)本堂である。
曹洞宗では本堂の背面に開山堂や位牌堂を接続することが多い。本堂の内部は中央奥に 須弥壇(しゅみだん)を設けた「内陣(ないじん)」、その前を「大間(だいま)」とし、内陣と大間の境に太い円柱を2本立て、内陣両側を「室中(しっちゅう) 」、その前を「東序(とうじょ)」「西序(さいじょ)」とする6間取りの平面形式が一般的である。しかし栄泉寺や梅林院のように、6室の側に2室を配して整形8間取りの平面とする寺院もある。 いずれの場合でも、全面に「大縁(おおえん)」を設ける。しかし栄泉寺に見られるように、かつては内部へ入ると通り土間があり、その奥を板張りの大縁(おおえん)としていたが、土間を板縁(いたえん)や畳縁(たたみべり)に改変し、その後土間そのものが廃されたものである。
日蓮宗は本立寺と報恩寺の2か寺で、本立寺本堂は基本的には6間取りで、全体の奥行きは深いものの、内陣とその両側の室の奥行きが極端に浅い珍しい平面形式である。
天台宗の蓮華寺と蓮増院では整形6間取りの平面であるが、同じ密教の真言宗では金剛院と遍照寺がともに堂の前半部を1室の外陣とし、奥を内陣及び両脇間としている。唯一の浄土宗寺院である安養院は、整形6間取りの全面に畳緑を付けた形式である。
表−19 寺院本堂および諸建物建立年代一覧
番号 | 年代 | 寺院(所在地) | 建物名 | 宗派 | 典拠 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 元禄9年(1696年) | 栄泉寺(えいせんじ)(三倉) | 本堂 | 曹洞宗 | 墨書 |
2 | 享保9年(1724年) | 宗源寺(睦実) | 本堂 | 曹洞宗 | 棟札 |
3 | 享保10年(1725年) | 高雲寺(一宮) | 本堂 | 曹洞宗 | 旧棟木墨書 |
4 | 享保12年(1727年) | 福泉寺(西俣) | 観音堂 | 曹洞宗 | 鰐口銘 |
5 | 享保20年(1735年) | 梅林院(森) | 本堂 | 曹洞宗 | 棟札 |
6 | 延享5年(1748年) | 蔵雲院(大鳥居) | 本堂 | 曹洞宗 | 棟札 |
7 | 宝暦3年(1753年) | 梅林院(森) | 本堂 | 曹洞宗 | 棟札 |
8 | 安永7年(1778年) | 泉竜寺(睦実) | 本堂 | 曹洞宗 | 棟札 |
9 | 安永10年(1781年) | 崇信寺(飯田) | 本堂 | 曹洞宗 | 棟札 |
10 | 天明3年(1783年) | 自得院(じとくいん)(鍛冶島) | 本堂 | 曹洞宗 | 寺伝 |
11 | 寛政5年(1793年) | 太慶寺(大久保) | 本堂 | 曹洞宗 | 棟札 |
12 | 寛政11年(1799年) | 安養院(あんよういん)(一宮) | 本堂 | 浄土宗 | 棟札 |
13 | 文化10年(1813年) | 蓮華寺(森) | 観音堂 | 天台宗 | 棟札 |
14 | 文政4年(1821年) | 万福寺(問詰) | 本堂 | 曹洞宗 | 由緒書 |
15 | 文政7年(1824年) | 陽向院(ようこういん)(薄場) | 本堂 | 曹洞宗 | 棟札 |
16 | 天保7年(1836年) | 蔵泉寺(田能) | 本堂 | 曹洞宗 | 棟札 |
17 | 天保8年(1837年) | 金剛寺(三倉) | 山門 | 真言宗 | 寺伝 |
18 | 元治元年(1864年) | 長月寺(乙丸) | 本堂 | 曹洞宗 | 棟札 |
(1)栄泉寺本堂

(森町三倉)
(2)栄泉寺本堂内部

解体修理によって1696年(元禄9年)の墨書銘がみつかて、この年に建てられたことが明らかになった。(森町三倉)
(3)大日山金剛院山門

大工は黒川喜兵衛、1834(天保8)年に建立したと伝えられる。 (森町三倉 大河内)
(6) 全生寺(ぜんしょうじ)山門

大通叟(だいつうそう)によって文化年中に建立されたという。 (森町円田)
(4)大丸さま

石棒をお祀りする大日堂で、本来は茅葺きであった。(森町亀久保 片吹)
(5)蓮華寺観音堂

1819年(文政2年)に観音堂屋敷へ建てられ、その後に現在地へ移された。 赤松の太い組みものは目を見張る。 (森町森)
(7)蔵雲院本堂外陣天井

1748年(延享5年)3月18日に落慶した本堂で、丹を塗った美しい天井である。 (森町大鳥居)
(8)梅林院本堂

1735年(享保20年)三嶋山の下から現在地へ移転したときに建てられたもので、平成10年に大修理を行った。 (森町森)
(9)蓮僧院本堂

一宮学頭寺で、幕末のころ、下段の畑地から現在地へ移転建立されたと伝えられる。(森町一宮)
(10)崇信寺本堂

1776年(安永5年)に建立されたもので、大工は幡鎌村の小西文右衛門である。 (森町飯田)
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更新日:2019年03月05日