令和4年度 森掛川IC周辺地区開発可能性調査業務について

更新日:2024年03月12日

業務の目的

本業務は、森掛川ICを活かした適切な土地利用を検討するため、新たに工業用地を確保するにあたっての諸条件等の調査・整理を実施し、工業用地としての開発可能性を調査することを目的とする。

業務内容

調査対象区域

周智郡森町 睦実地内(森掛川IC周辺地区)

面積:約183,000平方メートル

調査期間

令和4年8月4日~令和5年6月30日

調査内容

・現況調査業務

・地質調査業務

・軟弱地盤技術解析業務

・概算事業費算出業務

位置図

拡大図

拡大図

位置図(詳細図)

詳細図

調査報告

現況調査業務について

法適用状況等関連
項目 課題等
都市計画法 ・非線引き都市計画区域の用途地域の指定のない白地地域となっている。
・調査対象区域の北に工業専用地域が指定されている。
・非線引き都市計画区域のため、3,000平方メートル以上の開発行為にあたっては、開発許可申請が必要となる。
・また、1,000平方メートル以上の開発行為にあたっては、森町土地利用事業の適正化に関する指導要綱に基づき、次善に事業の承認が必要となる。
災害危険区域
宅地造成工事規制区域
・該当なし
砂防三法区域 ・該当なし
土砂災害特別警戒区域 ・急傾斜地崩壊危険箇所、土砂災害警戒区域(急傾斜地の崩壊)、土砂災害特別警戒区域(急傾斜地の崩壊)の指定地がある。
・急傾斜地崩壊危険箇所において義務や制限はない。
・土砂災害警戒区域において行為制限はない。
・土砂災害特別警戒区域においては、県知事の許可が必要となり、居室を有する建築物は建築確認の制度、構造規制が適用される場合がある。
河川区域
海岸保全区域
・該当なし
農業振興地域内農用地区域内農用地 ・大部分が農用地区域内農用地(青地農地)となっており、農用地区域の除外が必要となる。
・農業関係施策は、事業完了後8年が経過している。
地域森林対象民有林
保安林
・保安林の指定はない。
・地域森林対象民有林が指定されている。1haを超える土石又は樹根の採掘、開墾その他の土地の形質を変更する行為は、県知事の許可が必要となる。
自然公園区域
自然環境保全地域
・該当なし
鳥獣保護区 ・該当なし
埋蔵文化財包蔵地 ・奥戸綿古墳群、藤重山(とうじゅうやま)遺跡が広く分布しており、確認調査(試掘調査)や本調査が必要となる。
風致地区 ・該当なし
洪水浸水想定区域 ・該当なし
震度、液状化危険度 ・第4次地震被害想定において震度6強や震度7の揺れが想定される。
・液状化はレベル2地震動で発生する可能性がある。
静岡県盛土等の規制に
関する条例
・区域の面積が1,000平方メートル以上または土砂等の量が1,000立方メートル以上の盛土等を行う場合は、県知事の許可を受けなくてはならない。

 

土地利用状況等関連
項目 課題等
土地利用状況 ・主に山林と茶畑となっている。茶畑は荒れた状態が目立つ。
・杭瀬ヶ谷池は湿地状態となっている。
・南部の一部は水田となっている。
・周辺は宅地等の都市的土地利用がされている。
農業用水 ・調査対象区域の水田は、県営ほ場整備事業(太田川上流部)、水田農業確立対策推進事業(南戸綿地区)、県営かんがい排水事業(北戸綿地区)など、ほ場整備や農道、用水路、排水路、ため池等の整備が行われており、農業生産基盤が整っている。
・磐田用水は該当しない。
工業用水 ・森町全体が、中遠工業用水道の吸水区域に含まれておらず、中遠工業用水道の管路はは整備されていない。また、計画もされていない。
下水道 ・公共下水道全体事業計画区域に指定されている。現在は、下水道は未整備であり、進出する事業者による汚水排水対策が必要になる。
道路 ・調査対象区域の東側は都市計画道路の3.4.53インター戸綿線に接しており、ほぼ9m以上の道路幅員となっているが、それ以外の道路は、9m未満となっており、道路幅員の確保が必要となる。
・都市計画道路3.4.53インター戸綿線は長期的に整備を検討する路線となっている。
電気 ・調査対象区域に高圧送電線の鉄塔が2本存在する。鉄塔を移設する場合と移設しない場合の事業の検討が必要となる。

 

利水調査関連
項目 課題等
上水道 ・調査対象区域の周辺の道路に整備されている。
・遠州広域水道は該当しない。
地下水取水基準 ・森町全域が同じ取水基準となっており、新設揚水設備においては、揚水機の吐出口断面積は37㎠以下、採取する地下水の量は0.45立方メートル/分以下、隣接する揚水設備相互間の距離は200m以上(37㎠以下)、100m以上(22㎠以下)となっている。

地質調査業務について

調査対象区域は、地盤が良くないことが想定されていたことから、地層状況および地盤把握を目的として、ボーリング調査(6箇所延べ102m)と盛土材料試験を実施した。

ボーリング調査位置

調査対象区域の地層は、戸綿泥岩層を基盤とし、黒色の泥岩層が主体となっている。また、風化や変質のない岩盤は塊状であるが、抵抗性が弱く、スレ-キング(乾燥・吸水を繰り返す事により塊状の岩石が細粒化し、崩壊する現象)が発生しやすい状況になっている。ボーリング調査や強度試験の結果、谷部分は、軟弱な粘性土層が分布しており、造成時に盛土を実施した場合、地盤破壊や地盤沈下が発生する可能性が高いことが判明した。

盛土材料試験の結果については、盛土材料の評価として、以下の(2)材に区分される。(2)材は、地盤沈下の懸念が強い(3)材とは異なり、盛土転圧時に十分な破砕を行えばスレ-キングによる盛土の沈下は抑制されるものと評価されるが、調査対象区域は、以下の図の印の位置にあり、比較的(3)材の領域に近いことから、盛土材として利用する際には、十分に注意が必要であることが判明した。

盛土材料試験結果

軟弱地盤技術解析について

地質調査の結果、調査対象区域の谷部分は、軟弱な粘性土層が厚く分布し、造成時に地盤破壊や地盤沈下、さらには、地震時における地盤の液状化等が発生する可能性があることから、調査対象区域において軟弱地盤対策工の必要性について判断するため、軟弱地盤解析(地盤破壊、地盤沈下、地盤液状化)の検討を実施した。

検討断面図

地盤破壊については、盛土法面において、一部検討断面における常時の安全率、また、すべての検討断面における地震時の安全率が、安全な基準を下回る結果となり、安全な基準を満たすためには、対策工を実施する必要があることが判明した。

地盤破壊
検討断面 検討法面 常時
(目標安全率:1.5)
判定 地震時
(目標安全率:1.0)
判定
検討断面1 盛土法面 0.965 NG 0.540 NG
上部切土法面 7.809 OK 2.458 OK
検討断面2 下部盛土法面 1.645 OK 0.688 NG
上部切土法面 5.388 OK 2.132 OK
検討断面3 盛土法面 1.693 OK 0.918 NG
検討断面4 盛土法面 1.938 OK 0.719 NG
検討断面5 切土法面 4.267 OK 2.555 OK

地盤沈下については、それぞれの検討箇所にて、20.6~127.7センチメートルの沈下量となり、許容残留沈下量(10センチメートル)を大きく上回る結果となったことから、沈下量を減らすための、対策工を実施する必要があることが判明した。

地盤沈下
検討断面 地層名 沈下量
単位:センチメートル
許容残留沈下量
単位:センチメートル
沈下時間(90%)
単位:日
検討断面1 圧密層 Ac1 93.9 127.7 10.0 NG 1977
Ac3 15.7
Asc 13.8
Ac4 4.3
検討断面2 圧密層 Ac2 10.7 39.5 10.0 NG 1140
Ac3 17.0
Asc 9.5
Ac4 2.3
検討断面3 圧密層 Ac2 7.8 21.1 10.0 NG 160
Ac3 13.3
検討断面4 圧密層 Ac2 11.3 20.6 10.0 NG 409
Ac3 2.9
Asc 6.4

地盤液状化については、造成後の地盤にて、中地震時(震度5程度の地震)では、「顕著な被害の可能性が比較的低い」と判断されたが、大地震時(震度6~7程度の地震)では、「顕著な被害の可能性が高い」と判断されたため、対策工を実施する必要があることが判明した。

 

軟弱地盤技術解析での各検討の結果、対策工については、以下の表より各工法のメリット・デメリットを考慮し、「柱状改良工法」にて検討を行うこととした。

対策工法の検討
工法 メリット デメリット 結果
置き換え工法 土を入れ替えるため施工後沈下の心配がない。 掘削土が全て残土となるため、運搬処分費がかかる。 処分費が高額となるため不採用。
圧密促進工法 現地盤にドレーンを打ち込むため、費用が安価。 沈下に時間を要する。
地盤破壊や液状化の対策としては不適。
地盤破壊や液状化の対策も必要なため不採用。
表層改良工法 工事費用が比較的安価。
他の工法に比べて小型の重機でも工事が可能。
地盤改良面より地下水位が高い場合は対応できない。
改良深度が深い場合は適用できない。
改良深度が深いため不採用。
柱状改良工法 比較的小型の重機でも施行可能。 有機質土の場合、固化不良を起こすことがある。 有機質土ではないため採用。

 

概算事業費算出業務について

今回、調査対象区域内に鉄塔2箇所と既存宅地を含んでおり、特に鉄塔の移設には多額の費用を要するため、敷地全体を利用する案(全体計画案)、鉄塔を避ける案(鉄塔外し案)、鉄塔と既存宅地を避ける案(鉄塔・既存宅外し案)の3つの案について検討を行った。

全体計画案(9区画、有効宅地12.0ha)

全体計画案

鉄塔外し案(6区画、有効宅地8.5ha)

鉄塔外し案

鉄塔・既存宅外し案(6区画、有効宅地7.5ha)

鉄塔・既存宅外し案

概算事業費

概算工事費比較
区分 全体計画案 鉄塔外し案 鉄塔・既存宅外し案
概算
事業費
用地費 18.3億円 14.9億円 13.7億円
測量調査・設計費 38.3億円 38.億円 37.9億円
(うち文化財調査費) (35.1億円) (35.1億円) (35.1億円)
直接工事費 40.3億円 30.8億円 26.6億円
(うち地盤改良・
盛土材改良費)
(20.4億円) (18.0億円) (16.0億円)
間接工事費 41.6億円 31.7億円 27.5億円
事務費その他 12.5億円 10.5億円 9.6億円
合計 151.2億円 125.9億円 115.3億円
分譲予定
価格
平方メートル単価 125,985円 148,119円 153,688円
坪単価 415,752円 488,792円 507,170円

 

概算事業費については、これまでの調査における対策および課題に対する対応として、以下の費用を含み算出を行った。

 

地質に対する対策

○法面工

切土法面については、地山を露出させておくとスレ-キングや崩壊を起こす可能性があるため、北戸綿工業団地と同様に吹付枠工を見込む。

吹付枠工

【参考】吹付枠工(北戸綿工業団地)

 

○盛土材改良

掘削した土をそのまま盛土材として流用するとスレ-キングを起こす危険性があるため、円弧すべりが懸念される箇所や高盛土となる箇所に流用する盛土材については、改良が必要となる。

流用する土のうち半分について改良を見込む。

軟弱地盤に対する対策

○地盤改良

谷部分の軟弱地盤については、盛土を実施した場合、地盤破壊や圧密沈下が発生する可能性が高いため、対策として、中層混合処理工(パワーブレンダー工法)により、対象土と固化材を撹拌混合し、軟弱地盤を固化する方法にて地盤改良を見込む。

地盤改良必要範囲

地盤改良必要範囲

埋蔵文化財包蔵地に対する対応

調査対象区域内は約58,500平方メートルの埋蔵文化財包蔵地が含まれており、そのほとんどが未調査であるため、本調査に先立って試掘調査を行う必要がある。本調査の範囲については、試掘調査の結果を踏まえ決定するが、今回は過去実績から調査費用(測量・発掘調査、報告書作成)を平方メートルあたり6万円として、全域の調査を見込む。

・埋蔵文化財調査費 58,500平方メートル×60,000円=35億1,000万円(1坪198,000円)

また、本調査には相当の期間を要することが想定され、場合によっては5~10年以上かかることもある。

埋蔵文化財包蔵地

埋蔵文化財包蔵地

調査結果を受けての町の方針

調査対象区域は、新東名高速道路・森掛川IC周辺という県内外への交通アクセスに優れた区域であり、既存の北戸綿工業団地にも近接しているため、産業拠点として工場施設や物流施設の集積が期待されていた。

そのため、森掛川ICを活かした適切な土地利用を検討するため、工業用地の開発に向け本調査を実施したが、課題に対する対策および対応に想定よりも多額の費用がかかることが判明した。

費用増加の要因は、地質および軟弱地盤対策、埋蔵文化財包蔵地への対応である。

本地域の分譲予定価格を周辺市の工業用地の分譲予定価格と比較すると、大きく上回る結果となった。

調査対象区域の分譲予定価格
区分 全体計画案 鉄塔外し案 鉄塔・既存宅外し案
平方メートル単価 125,985円 148,119円 153,688円
坪単価 415,752円 488,792円 507,170円

 

(参考)周辺市における現在販売中及び販売済用地の分譲予定価格
所在地 袋井市 掛川市
工業団地名 A工業団地 B工業用地
平方メートル単価 21,787~27,956円 21,888円
坪単価 72,000~93,000円 72,358円

※上記の分譲予定価格は、調査対象区域の検討時点での価格になります。

 

本調査結果を受けて、庁内組織である企業立地プロジェクト会議及びプロジェクトチームにて検討を行った結果、事業費に多額の費用がかかること、また、埋蔵文化財の調査が長期間に及ぶことが想定されることから、費用対効果を考慮し、町として本調査対象区域の開発は、困難であると判断した。

また、工業用地以外の開発について、整備された利用しやすい農地としての開発や住宅団地としての開発も検討したが、いずれの場合も対象区域の切り盛りによる整地が必要である。

その場合も、埋蔵文化財の本調査が必要であるため、多額の費用と長期間の調査を要することに変わりはなく、工業用地以外での開発についても難しいとの判断となった。

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